「チャレンジャーバンク」の台頭ー世界で起こる第2の波

「チャレンジャーバンク」の台頭ー世界で起こる第2の波

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2017/05/10

(写真=Denphumi/Shutterstock.com)

チャレンジャーバンクの台頭

ブロックチェーンやロボアドバイザーなどのキーワードがFintech界隈で注目されているが、今年は特に「ネオバンク」、そして「チャレンジャーバンク」という言葉への注目が集まりそうだ。

「ネオバンク」に関しては実は2009年頃に米国で第1波が起きていた。その後しばらく鳴りを潜めていたが2016年頃から英国や欧州で第2波が起こるとの見方が強くなり、メディアや投資家からの関心が高まっているのだ。

しかし今回、英国や欧州における「ネオバンク」の台頭を見てみると、従来のモデルではなく「チャレンジャーバンク」と称される新しいモデルを採用するスタートアップが増えており、第1波のときとは様相が違っている。

今回はFintech界隈で注目される「チャレンジャーバンク」というキーワードを軸に、実際にどのようなことが起きているのか考察してみたい。

「ネオバンク」と「チャレンジャーバンク」の違い

ネオバンクとチャレンジャーバンク、どちらも新しい言葉のため定義が定まっておらず混同されがちだが、ビジネスモデルは大きく異なる。

ロンドンのFintech専門家Huy Nguyen Trieu氏の分類に従えば、以下のように説明することができる。

ネオバンクとは銀行業務ライセンスを持たず、既存銀行のデジタルインターフェイスとして、主にモバイルを通じたオンライン上でのキャッシュフロー管理などの機能を提供するモデル。

ネオバンクの代表例は、2009年に米国で設立され、2014年にスペインの銀行大手BBVAに買収されたSimpleなど。

一方でチャレンジャーバンクは、銀行業務ライセンスを取得し、当座預金、普通預金、住宅ローンなど既存銀行と同じサービスをすべてモバイルアプリ上で提供するモデル。

ネオバンクとは異なり、既存銀行から完全に独立した事業展開が可能になる。

既存銀行に依存しないというメリットがある一方で、各国の銀行業務ライセンスを取得することが大きなハードルとなっていたが、金融市場改革に力を入れる規制当局の後押しを受け、勢いを増している。特に英国や欧州ではこの動きが顕著で、第2波が起きると考えられている所以だ。

その英国や欧州で注目を集めているチャレンジャーバンクの代表格は、Monzo(英国)、Atom(英国)、N26(ドイツ)など。

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ネオバンクとチャレンジャーバンクの違い

Monzoに見るチャレンジャーバンクサービスの特徴

チャレンジャーバンクが提供するサービスとはどのようなものなのか。このほど英国の銀行業務ライセンスを取得し、本格展開を始めようとしているMonzoを例に見てみたい。

Monzoは2013年に英国で設立、クラウドファンディングサイト「Crowdcube」での資金調達で100万ポンドを同サイト最速記録となる96秒で調達するなど非常に注目度の高いチャレンジャーバンクだ。これまでに2200万ポンドを調達し、2017時点4月時点で10万ユーザーを超え、今夏からユーザー規模をさらに拡大していく計画という。

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Monzoアプリ

ユーザーが現時点で利用できる主なサービスは、Monzoのプリペイド版Masterデビットカードの利用、そしてモバイルアプリを使った入出金管理。

アプリを使いデビットカードにトップアップすることで、店舗やオンラインでの購買に利用することができる。また、モバイルのジオロケーションデータを活用しており、アプリのダッシュボードでいつどこで何を購入したのかが分かるようになっている。

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Monzoのプリペイド版Masterデビットカード

これらの機能は、収支バランスを把握・管理するのに役立つとユーザーの好感を呼んでいる。

さらに、カードを失くした・盗まれた場合、アプリ上の操作で簡単にカード利用をストップできるセキュリティ面も好評価を得ているようだ。

伝統的な銀行では購買情報がアップデートされるまで数日かかることや、カード利用をその場ですぐにストップしたくとも電話をかけなければならないなど、このような多くのひとびとが不便と感じている部分を取り除くことでサービス品質を高め、ユーザー満足度を上げることに成功しているといえる。

銀行業務ライセンスを取得しているMonzoは今後さらに既存銀行と同等のサービスを拡充していく計画で、今年末までには消費者向け当座預金口座サービスを開始するという。

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Monzoアプリで支払いをその場で確認できる

Monzoのユーザー獲得戦略

今年から本格的にユーザー拡大とサービス拡充を進めるMonzoだが、すでに10万ユーザーを獲得してきたという事実は見逃してはならないだろう。

2013年に設立されたばかりで、マーケティングやPRに十分なコストをかけられない無名のスタートアップがどのようにして10万ユーザーを獲得できたのか。

これはソーシャルメディアの活用、そしてコミュニティベースのマーケティングが根底にある。

Monzoユーザーは、Monzoが運営するオンラインコミュニティやMonzoのツイッターアカウントで自分の希望や要望を発信すると、Monzoはその希望・要望を吟味し、プロダクト・機能として開発していくためのロードマップを公開する。

そのロードマップはほかのユーザーも見られるようになっており、すべてのユーザーがそのプロダクト・機能を望むのかどうか投票する。

そしてその結果次第で、そのプロダクト・機能が実際に開発されるのかどうか決まるのだ。MonzoのAndroidアプリは、このユーザー投票で可決され開発が決まったという。

そもそもMonzoという社名も、ユーザー投票で決まったという。ここまでユーザーを巻き込むことで熱狂的なファンが出現し、その熱狂的なファンがソーシャルメディアで口コミを広め、自分の家族や友人を新規ユーザーとして連れてくるという仕組みを作り上げたのだ。

どのようなユーザーが熱狂的なファンとなったのか。MonzoのCEO、Tom Blomfield氏がthefinanser.comの取材に語ったところによれば、Monzoユーザーの大半が男性で、平均年齢は31歳、ロンドン在住でiPhoneを活用し、テック業界で働く層が圧倒的に多いという。

いわばテクノロジーのアーリーアダプターたちで、テクノロジーで世の中を革新できると考えている層に刺さった格好だ。

ユーザーとの信頼はコミュニティでの日々のやりとりで生まれていると言っていいだろう。コミュニティではCEO自らユーザーからの疑問や質問に答える場面も多く、親近感や共感が強まる結果につながっている。

チャレンジャーバンクの収益モデル

10万ユーザーを抱えるMonzoだが、その損益はどうなっているのだろうか。実はまだ収益化できていない。

Blomfield氏によると、収益化が実現するのは当座預金口座サービスを開始してからとのこと。つまり当座貸越の利息を1つの収益源と考えているということになる。

このほかにも金融商品を増やし収益を上げていくと見込まれるが、現時点の情報だけではどのような金融商品を柱としていくのか推測の域を出ない。

しかし、Blomfield氏に「1年先を行っている」と言わしめる、ブラジルの「Nubank」やドイツの「N26 」を観察すれば、Monzoだけでなく広く英国のチャレンジャーバンクの未来を占うことができるだろう。

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MonzoのCEO、Tom Blomfield氏(写真左)と同社CTOのJonas Huckestein氏(右) 

Nubankは2014年にブラジルで設立されたチャレンジャーバンクの1つ。ソーシャルメディアを巧みに活用し、2015年には15万口座が開設され、2016年にはNubankクレジットカードユーザー数が300万人を超えるなど急速なスピードで拡大している。

Monzoが指標とするNubankの収益源は大きく2つある。ユーザーがNubankカードで支払った際に支払いを受け取った側の企業がNubankに支払うインターチェンジ料、そしてカードローンにかかる利息による収益だ。このほかには海外でのクレジットカード利用にかかる為替手数料などもある。これまでのNubankカードによる取引数は7500万件に達している。

さらにはこのほど資金調達ラウンドで8000万ドルを調達し、航空マイルなどリワードサービスに関連する新しい商品を拡充する計画と言われている。

ドイツのチャレンジャーバンクN26の収益源はNubankと似ており、クレジットカード取引で発生するインターチェンジ料、当座預金口座における当座貸越利息、そして為替手数料だ。

このほか、他の金融機関と提携し、投資商品、貯蓄商品、クレジット&ローン、保険などを販売し、レベニューシェア型で収益を得ている。

Blomfield氏がNubankとN26が他のチャレンジャーバンクの指標となるだろうと指摘しており、少なくともMonzoはこうしたモデルによる収益化を追求していく可能性が高い。

Fintechの中でも今年特に注目が集まっている「チャレンジャーバンク」を理解するには、少なくともNubankが展開するブラジル市場、N26の欧州市場、そしてMonzoやAtomの英国市場の動向をウォッチする必要があるだろう。

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