ブロックチェーン普及のカギは標準化ーー2017年以降の動向

ブロックチェーン普及のカギは標準化ーー2017年以降の動向

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2017/02/03

(写真=Zapp2Photo/Shutterstock.com)

金融に変革をもたらすと言われているブロックチェーンテクノロジー。その可能性は金融だけにとどまらない。社会全体を大きく変える「ディスラプティブ・テクノロジー」として注目を集めている。

一方、どれだけ可能性のあるテクノロジーであっても広く普及しなければ、社会を変えるイノベーションとはならない。

広く普及させるには、人々がテクノロジーを安心して使えるような環境が整備されることが必要だ。この環境整備において、規制・標準化が重要になってくる。ブロックチェーンテクノロジーにおける規制・標準化は今後どのような方向性で進むのだろうか。

今回は、2016年末に発表された最新研究レポートをもとに、ブロックチェーンの規制・標準化が今後どのように発展していくのか探ってみたい。

ブロックチェーンに伴う重要リスクとは

2016年11月に発表されたブロックチェーンに関する研究調査レポート『The Missing Links In The Chains?』。英国王室属領オルダニー、会計大手PwCなどがスポンサーとなり実施されたこの調査は、識者60人以上へのインタビューを通してブロックチェーンに関するリスクを洗い出し、それらのリスクに対してどのような規制・標準化が必要になるのかを明らかにしている。

ブロックチェーンに関して多くの識者が挙げたリスクは大きく3つに分類できる。

1「分類・パフォーマンス評価」、2「データに関わるガバナンス・責任」、3「商業取引に関わるガバナンス・責任」だ。

「分類・パフォーマンス評価」とは、ブロックチェーンテクノロジーを応用した様々なプロダクトが生み出されるなかで、それらをどう分類し、どのように評価するのかという問題のこと。

「データに関わるガバナンス・責任」とは、ブロックチェーンシステムを誰がどのように管理するのかという問題のこと。特に、データエラーが発生した場合の修正や争議調停に関わる。

「商業取引に関わるガバナンス・責任」とは、支払いや個人情報など高リスク分野における情報を扱っているときに誤りが発生した場合の責任所在や賠償に関わる問題のこと。

これら3つのリスクへの対応に関して同レポートで明らかになったのは、現段階では新たな法的枠組みを導入するのではなく、既存の法的枠組みのもと任意の標準化を進めることがリスク管理につながるという見解が多かったことだ。ニューヨーク州金融サービス局が導入した仮想通貨事業免許制度「Bit License」などの新規制は、仮想通貨市場発展の足かせになってしまうという。

ブロックチェーン標準化における重要事項

同レポートは、これまで様々な産業で起こってきた任意の標準化・規格化に言及し、ブロックチェーンに関しても市場主導で任意の標準化が進む可能性を示唆している。

「分類・パフォーマンス評価」に関する標準化においては、パフォーマンス結果を考慮した定義・分類が必要になると指摘。「何が、どのように」を基準にするのではなく、パフォーマンスの特徴を基準にすることで定義・評価が可能になるという。

「データに関わるガバナンス・責任」に関して標準化を進めるには、ブロックチェーンシステムにおいて、どのように個人情報が記録され、誰がデータを保持し、どのような状況下でデータが集約されるのか、そしてデータの修正や削除はどのような工程で実施されるのかを明確にすることが重要になるという。

「商業取引に関わるガバナンス・責任」の標準化では、ブロックチェーンを利用した商業取引が市場の信頼を失墜させないようすることが何よりも重要と指摘。特に金融サービスセクターでは、ガバナンス、義務、個人情報、責任、コンプライアンスなどにかかるリスクを管理する標準化枠組みを作ることが望ましいという。

では、実際どのような過程で標準化が進むのだろうか。

ブロックチェーン標準化 3つのルート

ブロックチェーン標準化は、国際標準化機構(ISO)、各国国内標準化機関、そしてオープンプロセスの3つのルートで進む可能性がある。

ISOは、国際的な標準である「国際規格」を策定する世界最大のボランタリー(任意の)開発組織。加盟国から162の標準化団体が参加している。ISOで標準化を進める利点は、標準策定において明確な認証・認可の過程を適用でき、新標準の信頼性を高めることができることだ。

すでにISOに参加するオーストラリアの国内標準化機関 Standards Australia がISO本部に「ブロックチェーン標準化専門委員会」の設置を提案し、許可を受けている(2016年9月)。この専門委員会では、ブロックチェーンシステムにおける相互運用性、プライバシー、セキュリティ、用語について標準化を進めていく計画だ。

一方、各国の国内標準化機関でもブロックチェーンの標準化が進む可能性がある。英国では、英国規格協会(BSI)が独自の規格標準「PAS(Publicly Available Specification)」を策定している。PASはISO規格に比べ煩雑さが低いとされ、もし広く認知されていると判断された場合、ISO規格への格上げも起こりうるという。このほか、米国国家標準協会(ANSI)やドイツ規格協会(DIN)などでも標準化が進むかもしれない。

3つ目のオープンプロセスは、インターネット技術の標準化を推進する任意団体IETFが策定する技術仕様書(Request For Comments)をもとにブロックチェーンの標準化が進むというもの。ISOや各国標準化機関による標準化に比べ多くのリソースが必要となるプロセスだが、専門知識を持つコミュニティによって標準化を進めることで、各産業の需要をしっかり満たす頑強なプロダクトを提供できるようになることが利点だ。

いかがだっただろうか。ブロックチェーン普及に重要な役割を果たす規制・標準化。今回紹介したレポートが明らかにしたように、しばらくはISOなどを中心とした任意の標準化が進むのか、それとも想定外の動きが出てくるのか、今後の展開に注目したい。

文:細谷元(Livit

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