Fintechスタートアップの東南アジア進出――シンガポールのアクセラレータープログラム「FinLab」での経験を4社が語る

Fintechスタートアップの東南アジア進出――シンガポールのアクセラレータープログラム「FinLab」での経験を4社が語る

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2017/01/30

(写真=RPatrick Foto/Shutterstock.com)

東南アジアのマーケットへの進出を望んでいる企業にとって、シンガポールを踏切り台とするのは理にかなっている。同地域の中央に位置し、市況は活発で、インフラは世界最高水準だからだ。

以下4社のFinTechスタートアップがシンガポールという島国でアイデアを実現させようと決めた理由はそこにある。現地のアクセラレータープログラムであるFinLabの支援でシンガポールから同地域に展開し、各地のマーケットとつながることができるからだ。

Turnkey Lender ノンバンクなどへのテクノロジー・プラットフォーム

Turnkey Lenderは銀行以外の貸金業者、オンライン貸金業者やその他のローン事業者向けのテクノロジー・プラットフォームだ。

「銀行業界から様々な事例を学び、それらを一つのプラットフォームに組み込んだ。私たち以外とのやりとりは不要になり、それが私たち独自の価値の提供に繋がった。一番の強みは、SaaSとして値段設定することによって、安価に提供できる点だ」とTurnkey Lenderのビジネス・デベロップメント・ディレクター、エレナ・ロネンコ氏は言う。

完全に自動化されたシステムによって貸し手は時間と様々な費用を抑えることができる。このシステムは、承認率、ローンの処理許容量、ローンの管理効率を最適化するものだ。また独自の信用度計算モデルとその調整機能を備えており、信用決定プロセスを改善し、リスクに基づいた価格決定を可能にしてポートフォリオ・リスク特性と損金処理を最小限に抑える。

このシステムがあれば、金融業者は代替データ・ソースを使い、銀行が本来数時間から数日かけて行う融資希望者の情報把握を数秒で行うことができるようになる。

最近はインドネシアやフィリピンなど、貸金業を自動化し管理するテクノロジーをほとんど、もしくはまったく持たない新興国・発展途上国に焦点を当てている。

「この地域内のポテンシャルは明らかだが、現地のサポートなしでビジネスを持ち込むことの難しさも理解している」とロネンコ氏は言う。これがTurnkey LenderがFinLabとUOBとのパートナーシップに大いに感謝している理由だ。

「彼らは私たちの就労ビザ取得の手助けをし、銀行口座の開設やその他の手続きをしてくれた。これは私たちがこの地でビジネスを早急に始動するにあたって大きな助けとなった」と彼女は認める。
「FinLabは彼らの広範囲に渡るビジネスと投資家のネットワークを私たちに共有してくれた。ここに初めて来たとき、私たちは現地のマーケットについて何の知識も持っていなかったこともあり、アセスメントを速やかに行い、アプローチを決定する際、そのネットワークを有効活用することができた。またUBOはここでの貸金業界をより良く理解する手助けもしてくれた」

「さらに彼らは信用リスクのアセスメントについてのアドバイスも提供してくれた。このパートナーシップのおかげで、私たちはASEANマーケットで好位置を保っている。」と彼女は言う。

Nickel 仮想通貨とブロックチェーン技術を使った送金・外国為替

Nickelは仮想通貨とブロックチェーン技術を使った送金事業および外国為替に従事しているが、ビットコインを用いた概念実証を元に、外国人労働者の送金手続きを行うことから始まった。しかしながら、その頃からNickelはB2B寄りのアプローチへと舵を切った。

共同創設者であり、CEOのリアム・ジュリエン・リン氏は「中小企業にとっては、プライス・ポイントや資金を受け取るまでにかかる時間、送金時の利便性、などといった課題が格段に増えることに気が付いた」と話す。

さらに「中小企業はすぐに為替手数料で最大4倍の節約ができるだろう」とリン氏は言う。Nickelの一番の強みは、マーケットで他に例を見ない手数料を提供していることにある。

「前回確認したところ、手数料をとある競合より1%安く提供できる。また最大10万シンガポールドルの個別取引を行える」とも言う。通常、中小企業にはこれほどの手数料は提供されない。
「こうしたことから、私たちは一貫性のある手数料を提供し、10万シンガポールドルを超える取引を可能にする新しいプロジェクトを立ち上げ、ブロックチェーン上に私たち独自の為替取引サービスを創りたい」と元投資銀行員である彼は続ける。

さらに「各国の地場の銀行はより低い為替レートを提供することができるため、各銀行とコネクションがあるUOBと良好な関係を築いている」と話す。

NickelがUOBへの計り知れないほど貴重なコネクションを得たのはFinLabを通してだった。「彼らなしでは、銀行とこれほど親密に協力できる機会は得られなかっただろう」とリン氏は認める。「彼らは多くの政府機関と話す機会も与えてくれた。今はAPAC全体の金融当局と話し合いの場を持っている」と彼は付け加える。

Cardup 通常ポイントが付かない支払いでもポイント取得を可能に

Cardupはニッキー・ラムゼイ氏の発明品である。それはどういったアイデアか?ローンの返済や学費などの高額なものは通常、現金や小切手、もしくはネット送金で支払われ、クレジットカード払いはできないためポイントなどは付かないが、それを可能にすることでポイントを獲得し、換金してもらうというものだ。

「アジアでは、モバイルウォレットや電子決済など、すでに多くのデジタル決済が行われている」と彼女は説明する。

「アジア人はすでにこういった特典を得ることに慣れているために、ポイントなどの報酬やディスカウントを最大限獲得する方法をよく知っている」とラムゼイ氏は付け加える。

また「しかしながら彼らの支出の大半、例えば所得税、家賃、学費の支払いについては、彼らは何のポイントも受け取っていない。そのことから私たちはポイントなどの報酬エコシステムをそこに持ち込んだのです」とも。

昨年10月のベータ版ローンチの際、非常に多くの人々に注目され、利用されることになったのは驚くまでもない。それ以来、目を見張るような成長を遂げている。

しかし、今日の成功までは平たんな道のりではなかった。直面した最大の壁は、世間に認められる基本的なビジネスモデルを作り上げることであった。「これはクレジットカード業界での新しい試みであり、銀行やVISAやMastercardのような会社と多くの開発業務が必要だった」とのことだ。

「規制と法的枠組みの観点から見て、誰もが安心できるようなモデルを作る必要があった。そこにはリスクとコンプライアンスの面で従うべき多くのプロセスとガイドラインがあった」と言い、さらにこう続ける。「投資の面で、FinLabは投資家とベンチャーキャピタルに門戸を開く手助けをしてくれた。また彼らはプログラムの期間中だけでなく、その後も継続的に私たちに多くの取材とメディアの露出を得られるようにUOBと綿密に協力して動いてくれた」

Attores ブロックチェーン技術に基づいたプラットフォームを提供

デジタル署名の書類がシンガポールや世界中のその他多くの地域で正式に認められていることをご存じだろうか?

しかしながらここに根付く課題はセキュリティだ。どのようにしてその書類が原本であるかを見抜くのか?いつ誰が署名をしたのかを知ることができるのか?

この領域こそ、Attoresのようなブロックチェーン技術に基づいたプラットフォームを提供する企業が活躍する場だ。AttoresのCEOであり共同創設者のデイビッド・モスクウィッツ氏と、同社CTOであり共同創設者のゴーラング・トーヴェカー氏はシンプルなアイデアを持って事業を立ち上げた。

「私たちはブロックチェーンとスマートコントラクトを使い、書類やデータを安全に共有できるようにしたい」とモスクウィッツ氏は言う。

「私たちには2つの戦略がある。一つ目は金融機関向けで、お互いに安全性に情報を共有することを可能にしている。例えば、貿易金融においては、保険会社はブロックチェーン上に貨物海上保険証券を発行することができる。

二つ目は、消費者またはその代替となるセグメントだ。投資家やユーザーにこのプラットフォームを実演したが、デジタル書面の部分が気に入られた。そのためこのテクノロジーを生産消費者仕様にして分離、展開した」とモスクウィッツ氏。

「私たちのシステムはモジューラーの役割を果たす。顧客が何を求めるかによってテンプレートを極めて短時間で作成することができ、だからこそいつでも複数のプロジェクトを行うことを可能にしている」とトーヴェカー氏は付け加える。

創業当初、彼らはスマートコントラクトを使ってスワップやデリバティブ契約を行っていた。会社をスマートコントラクトサービスから広範囲の製品の取り扱いへとシフトさせるアイデアは、実はFinLabのアクセラレータープログラムに採用された後に生まれた。

「FinLabを訪問した時、本当は他のサービスの展開を考えていた。しかしそのプログラムを通じて、テクノロジーを変えずに多方面に旋回することができた」

「UOBの経営陣と直接接点を持っているので、私たちはこのマーケットでさらに信用を得ることができる。彼らはより多くのことを達成し、物事がうまく進むよう私たちの限界値を引き上げることに注力してくれる」(提供:FinTech online

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