Finovate Fall 2016に見るフィンテックのトレンド

Finovate Fall 2016に見るフィンテックのトレンド

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2016/10/21

(写真=PIXTA)

9月にニューヨークで行われた、著名なフィンテックイベントであるFinovateFall 2016では、合計71社のフィンテックスタートアップ、IT企業、金融機関がプロダクト紹介のピッチを行った。Best of Show(聴衆による投票で決まる賞)を受賞した企業や、印象的だった企業を中心に紹介する。

人工知能(AI)を活用したデジタルバンキング

・ KORE社
同社が“スマートバンキングボット”と呼ぶソリューションは、Web / SMS / Facebook Messenger等に対応したAI活用の金融機関向けボットエンジンだ。顧客が質問内容や操作したい内容を自然言語で指示すると、それを解析して残高照会や送金処理、オファリングの提示など、最適な対応を行う。顧客からの能動的なアクションだけでなく、不正を検知して顧客に通知しアクションを促したり、請求書の支払い時期になると支払いを促す通知を行ったりもできる。IBM Watsonのような汎用的な人工知能は教師データの学習に手間がかかるが、本ソリューションは金融機関向けに数多くのパターンをすでに実装済みであり、すぐにでも実環境で利用できることを強みとしている。

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出展:http://finovate.com/videos/finovatefall-2016-kore/

・ Clinc社
前述のKORE社や、比較的早期からAIチャット機能を提供してきたPersoneticsが定型パターンの多様化で自然な応対を実現しているのに対し、同社はより長い複雑な問い掛けにも回答できるようになっている。例えば「最近半年間出張が多かったので、出張費用の内訳を出して欲しい」「去年の誕生日にシカゴのレストランに行ったけど、もう一度行きたいのでその時の支払いを見たい」といった内容にも対応できる。なお、AIエンジンはミシガン大学で開発されたオープンソースのLucidaを採用。

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出展:http://finovate.com/videos/finovatefall-2016-clinc/

・ Bankjoy社
2016年に入り、音声インターフェースを備えたデバイスが普及し始め、ボイスバンキングのソリューションも増えてきている。同社は小規模銀行やクレジットユニオン向けのモバイルバンキングプラットフォームやAPIを提供する会社だが、ピッチではAmazon Echoを利用して残高照会やデビットカードロックといったデモを行った。音声認識はAmazon Echoの機能を利用し、残高照会などのバンキング機能は同社が提供するAPIと接続することで、大きな労力をかけることなく、こうしたインターフェースを実現できるという。

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出展:http://finovate.com/videos/finovatefall-2016-bankjoy/

ブロックチェーン/仮想通貨を活用したフィンテックサービス

・ Full Profile社
2015年12月にオーストラリアで創業した同社は、農業セクターのサプライチェーンが抱える、透明性・効率性・信頼性という問題を解決するブロックチェーン “AgriDigital”を構築。中小農家は立場が弱く、農作物を納品してもすぐに代金を支払ってもらえず、運転資金枯渇のリスクにさらされているケースが多いという。契約は紙で行われ、契約処理等も非効率なまま。そこで、AgriDigitalは農家とバイヤーがつながる仕組みを提供する。例えばバイヤーが穀物の買い条件(=スマートコントラクト)を作成すると、農家はモバイルで通知を受け取ることができる。農家は、モバイル上で販売数量を入力して契約作成のボタンを押すだけで、契約を済ますことができる。バイヤー側は画面上で契約を確認し、複数の銀行から提示されたファイナンスオプションを選択して支払いを実行。また、農家はブロックチェーン上に記録されたバイヤー側の支払余力を参照することができ、支払いのカウンターパーティリスクを軽減できる。これらの特徴がプロセス全体を効率化し、サプライチェーンを健全化することになる。フィンテックとアグテック(農業+テクノロジー)が融合した新しい形のサービスといえる。

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出展:http://finovate.com/videos/finovatefall-2016-fullprofile/

・ BitBond社
同社は“世界で初めて”ビットコイン決済を利用したクロスボーダーでの中小企業向けマーケットプレース・レンディングを提供。事業を実施するために、ドイツでアセットブローカーとして認可を受けている。同社によると、世界の中小企業が、融資を受けるために年間2兆ドルのコストを支払っている現状に商機を見出したという。個人投資家および機関投資家に対して、魅力的なマーケットで投資する機会を提供し、すでに13%/年の平均リターンを達成。クロスボーダーでの投資の大きな課題は、借り手のクレジットスコア基準が国ごとに異なることだが、同社はブロックチェーンをベースとした新たなスコアリングモデルを提供。借り手の中小企業オーナーはまず、同社のWebサイトで自身のプロファイル情報を入力し、またeBayやPayPal上の販売・支払いデータやSNS上での繋がりデータを連携し、スコアリングに活用する。eBayやPayPalはグローバルでデータフォーマットが決まっており、異なる国でも一貫性のあるデータ評価ができるという。

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出展:http://finovate.com/videos/finovatefall-2016-bitbond/

・ Identitii社
全ての銀行は、金融不正やマネーロンダリングを防止するため、KYC(Know Your Customer)と呼ばれる顧客の身元確認プロセスを厳格に課されている。同社のソリューションは、全ての送金取引にIdentity Tokenと呼ばれるIDを付与し、プライベートブロックチェーンに記録。これを複数の銀行間で共有することで、KYCおよび不正対策をより高度化する仕組みを構築している。ミドルウェアとして動作するため、既存のコアバンキングに大きく手をいれることなく導入できることも特徴。

RegTech

・ Qumram社
同社は、従業員のネットワーク利用ログの管理や、自社ウェブサイトの定期アーカイブ記録など、監査を目的とした機能を提供。今回のFinovateでは、従業員がSNS上で顧客と会話した内容を全て録画・保存する技術を披露。中国のCreditSuisseではWeChatを顧客とのインターフェースで利用せざるを得ない状況になっているが、従業員がメッセージを送信する前に全量を検閲することは負荷が高い。そこで、同社のソリューションは、検閲の代替手段として画面を録画する機能を実装。通常、SNSのメッセージは記録できないが、このソリューションなら対応できるという特徴を持つ。

注目されるブロックチェーン

Finovateは2016年で10周年を迎える、業界特化型ベンチャーイベントとしては息の長いイベントだ。2016年はアジアにおけるフィンテックの高まりを受けてFinovateAsiaが復活し、11月に香港で行われることになっている。

初期のFinovateではフィンテック黎明期でさまざまな領域における新しいビジネスモデルが披露され、スタートアップがピッチを行う印象が強く、まさにベンチャーと投資家を結びつけるイノベーティブな場だった。ところがここ2年ほどの登壇社の顔ぶれを見ていると、レイターステージのベンチャー、比較的規模の大きなITベンダーが増加し、ディスラプティブなサービスよりも、金融機関向けのソリューションが目立つようになってきている。これは、フィンテック導入機運が高まっている金融機関向けの市場が立ち上がってきたことを意味する。

FinovateFall 2016では、上記で紹介したようなAIやボットを活用した、より「親しみやすい」「使いやすい」金融サービスを構築するためのサービスやAPIの展示が目立っていた。一方、金融機関での活用が注目されているブロックチェーン系のサービスは未だ少数派。ブロックチェーンは金融のみならず、業界を超えたビジネスネットワークを構築する手段として注目されていることから、2017年以降のFinovateではブロックチェーンを活用したプレーヤーが増えていくだろう。(MUFGデジタルイノベーション推進部 藤井 達人)

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