ドバイに見る「世界初のブロックチェーン都市」の野望

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2017/02/21

(写真=Laborant/Shutterstock.com)

2016年10月、世界初のブロックチェーン都市再編計画を発表したドバイ。国家の総力を挙げた一大プロジェクトへの主な取り組みを紹介する。

ドバイ、テクノロジー革命の機動力

ドバイが最先端のテクノロジーを駆使した大胆な改革に乗りだした背景には、新たな経済基盤を構築する意図がある。

1966年に石油が発見されて以降、石油産出国というイメージが定着したドバイだが、長年にわたり石油に依存しない経済基盤を維持してきた。石油が国内総生産(GDP)を占める割合は5%以下に抑え、金融・貿易・運輸・観光産業など幅広くユニークな経済開発戦略を用いている。

他国同様、2008年の世界金融危機の影響から順調な回復の兆しを見せているものの、変化の時期が訪れている感は否めない。ブロックチェーン技術の応用に先立って取り組むことでドバイ産業の構造を根本から改革し、新たな経済成長につなげる野望がドバイ政府の機動力となっているのは明白だ。

世界中の注目を集める「ドバイ・ブロックチェーン・ストラテジー」

「ドバイ・ブロックチェーン・ストラテジー」と名付けられたこのプロジェクトは、ドバイ全域をブロックチェーン化し、行政の効率化から多岐にわたる事業分野の促進を図るものだ。

プロジェクトの指揮をとるドバイ次期首長候補、ハムダーン皇太子は2015年3月「ドバイ未来博物館」の開設を発表。起業家や発明家に未来を探索・創造する場を提供することで、アラブ首長国連邦(UAE)を革命と知識経済の中心的位置づけに押しあげる戦略を打ちだした。

さらに2016年2月には自らが財団評議員会議長をつとめるドバイ未来博物館(旧ドバイ未来基金)を軸に、技術革新を目的とする「グローバル・ブロックチェーン・カウンシル(GBC)」を設立。現時点ではIBM、Cisco、Microsoft、TECOM、エミレーツNBD銀行、ドバイ国際金融センター(DIFC)、ドバイ・マルチ・コモディティーズ・センターなど、多様な企業が参加している。

その後も、ドバイのテクノロジーへの野望は加速している。2016年5月にはドバイの超高層ビル「エミレーツタワー」の複合施設内に世界初の3Dプリンターでつくられたオフィスがオープンした。約250平方メートルのこのオフィスは、17日間で建設された。

ブロックチェーンのイミュータブルな利点を活かした「スマート政策」

3Dオフィス建設の興奮も冷めやらぬ2016年の10月、ドバイ政府は公文書管理のブロックチェーン化を発表。2020年完了を目途に、ブロックチェーンのイミュータブル(作成後変更不可能)な利点を最大限に活かした「スマート政策」を打ちだしている。

公文書管理をブロックチェーン化することにより、例えば一度登録された住民や企業の基本情報が永久に保存される。その結果年間2,500万時間の労力が節約されるほか、CO2(二酸化炭素)排出の抑制なども期待できるというわけだ。各国政府が長年頭を悩ませてきた大きな課題に、大胆なソリューションを用いて本格的に取り組んでいる。

「第5回ワールド・ガバメント・サミット」開催

そうした取組を進めているドバイで、世界中の政府や企業の要人が集結し、未来の政府像について議論するフォーラム「ワールド・ガバメント・サミット」が開催された。2013年から毎年ドバイ政府が開催しており、2017年も2月14日から17日にわたり大盛況のうち幕を閉じた。

政府関係者を筆頭に、海外からもスペースXのイーロン・マスクCEO、国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事、世界銀行のジム・ヨン・キム総裁など早々たるメンバーがスピーチを行い、テクノロジーから所得格差、教育、健康まで幅広い分野から幸福な社会を創出する手段について語り合った。

日本からは安倍晋三首相がビデオメッセージという形式で参加し、2013年のドバイ訪問の際、「民族や宗教に関係なく多様な人々が共に暮らし、活動する」包括的文化に感銘を受けたとコメント。日本も「イノベーションを通じた経済成長の実現を推進している」が、多様性が重要なカギとなる点を述べた。

最先端のテクノロジー開発に贈られるWGSアワードでは、リアルタイムで電力利用を分析可能な「Eesti Energy」やデジタル医療カルテを導入したエストニア政府、世界初の自動運転タクシーテスト営業を実施したシンガポール国土交通省、首都アムステルダムに「IoTリビングラボ」を開設したオランダが受賞。

ブロックチェーン部門の最優秀賞はイーサリアムのプラットフォームを基盤にIoTアプリを開発しているスタートアップ、「Project Oaken」に贈られた。Project Oakenはドバイ政府主催のハッカソン「ブロックチェーン・バーチャル・ゴブハック(Blockchain Virtual GovHack)」でも、ファイナリストに選ばれている。

ブロックチェーンによる都市再編計画を推進

以上のように、ドバイ政府は都市計画の策定やオフィスの設置のみにとどまらず、各国・企業の要人やスタートアップを巻き込んだ動きの発信に取り組んでいる。政府が強力にリードし、テクノロジーを推進していく先進モデルとなりそうだ。

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