BOE、ブロックチェーンへの熱意 独自仮想通貨発行は実現するのか?

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2017/02/21

(写真=chombosan/Shutterstock.com)

中央銀行としては世界で初めて、分散型台帳技術に秘められた可能性の探索に乗りだしたイングランド銀行(BoE)。独自の仮想通貨「RSコイン」発行の可能性とともに、BoEのブロックチェーン開発への取り組みを追う。

ブロックチェーン決済システム構築への取り組み

BoEは2016年1月、決済システム改革の一環として、分散型台帳技術の採用を検討していることを明らかにした。改ざん不可能な全取引データを永久に記録するというブロックチェーン最大の利点を活かし、有価証券の管理環境や決済システムの向上を図る試みだ。

1999年に金融機関破綻時のシステム・リスクを低減する意図で導入された「RTGS(即時グロス決済)」だが、20 年近くの月日が経過し再構築を必要とする時期に差しかかったとの判断もある。分散性に優れたブロックチェーンへの基盤移行をとおし、低コストで安全性の高い決済システムの再構築を目指している。

2016年6月にはFinTechアクセラレータを設立。国際プロフェッショナルサービス企業、PwC(プライス・ウォーターハウス・クーパース)、サイバーセキュリティー信用格付け企業、BitSight、データリスク・ソリューション企業、Privitarと提携し、本格的なプロジェクト開始に乗りだした。

金融取引にともなうデータセキュリティーのブロックチェーン化から始まり、ブロックチェーンを採用したシステムおよびデータ収集組み込み型メタデータ(属性情報)管理、ルール言語を含むビジネスルール・ツールの概念実証(POC)を進めている。将来的には特に取引報告データなどの次世代データクレンジングの開発にも、ブロックチェーン技術を利用できる可能性を追求していく意向だ。

それ以前、2015年12月にはユニークな試みとして、ブロックチェーンに精通した大学生インターンを募集。斬新なブロックチェーン活用のアイデアで見事選ばれた6人の学生には、インターン補助金やプロジェクトへの参加権利が提供された。

独自の仮想通貨「RSコイン」とは?

BoEがブロックチェーンとともに研究を進めているのが、中央銀行発行の仮想通貨だ。ビットコインに代表される仮想通貨が、BoEのブロックチェーン研究の土台になったといっても過言ではない。2014年以降、定期的に仮想通貨に関する報告書を発表している。

また、中央銀行にとっての利用価値を検証する意図で、2016年2月にユニバーシティ・カレッジ・ロンドンと提携し、仮想通貨「RSコイン」を開発。「スペシャル・キー」と呼ばれる通貨供給量の制御など特殊な権限を付加させた点が、プロトコルによって制限が定められたビットコインと異なる。またビットコインの取引件数が1秒間に7件と限定されているのに対し、RSコインは2,000件以上の取引処理が可能だ。

ビットコインとはまったく異なる特性

しかしRSコインを「ビットコインのアップグレード版」と認識するのは大きな誤りだ。BoEの目的はRSコインをとおして、貨幣供給の管理権を中央銀行に置く点にある。これにより透明性・信頼性の高い取引記録の作成が可能になり、金融政策の明確化が図れるなど、多様な利点がもたらされると期待されている。

この点についてはテクノロジスト、アンドレアス・アントノポウロス氏が、実に的確に指摘している。ビットコインが銀行の脅威となり得る可能性を秘めた存在であるのに対し、RSコインは銀行を脅かすどころかより受容的な存在である。つまり両コインは同じ仮想通貨という枠組みでありながら、まったく異なる役割を担っているということだ。

仮想通貨発行に対するBoE、専門家の見解

RSコインの開発をうけ、専門家の間では意見がわかれている。一例をあげるとケンブリッジ・ブロックチェーンのマシュー・コマンズCEOは、「仮想通貨の導入が、新たな金融政策の実現に貢献する」とポジティブな見解を示している。対照的にNxtファンデーションのバス・ウィッセリンク氏は「パブリック・ブロックチェーンの効率的なメカニズムを活用しないのであれば、(RSコインも)単なる仮想通貨の一種でしかない」と、冷静に受けとめている。

それでは肝心のBoEの見解はどうなのか。マーク・カーニー総裁は2016年6月、仮想通貨発行に関する研究を継続する意思を明らかにした。仮想通貨への関心から火がついたブロックチェーン技術の探索が、ブロックチェーンの無限とも思える潜在的可能性を明らかにするにつれ、よりスケールの大きな研究課題へと分散し始めたといったところだろう。

ビットコインの脅威を体感している中国は発行を促進

ブロックチェーンや仮想通貨の開発・研究に取り組んでいるのはイングランド銀行だけではない。中国、ロシア、オランダ、カナダなどの中央銀行がテクノロジー企業と提携し、競うようにそれぞれのプロジェクトに乗りだしている。前述したとおりいずれの中央銀行もコスト・労力削減、効率性・透明性の向上などを利点に挙げているが、最終的な目的は「あらゆる金融取引、しいては大衆を監視下に置くこと」ではないかとの見方も強い。

既存の銀行券システムをブロックチェーンや中央銀行が管理する仮想通貨に置き換えることで、流通経路の追跡が容易になる。一般的な民間流通は勿論、これまで巧みに追跡網を潜り抜けていたダークマネー(闇金)ですら、中央銀行の追跡から逃れることが難しくなるだろう。

こうした説を裏付けるかのように、世界一のビットコイン取引量を誇る中国では、中国人民銀行(PBOC)が独自の仮想通貨開発・発行に全力を注いでいる。イングランド銀行が仮想通貨の発行をある意味棚上げにしている背景には、脅威に対する温度差も関係しているものかと思われる。

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