人工知能が企業ごとの採用傾向を学習、新卒採用のエントリーシート選考業務を効率化

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2017/02/01

(写真=alphaspirit/Shutterstock.com)

人財領域の課題をICTにより解決する、「HR Tech」(Human Resource とTechnologyの合成語)と呼ばれる様々なサービスが国内外で展開され始めている。人財採用業務や、組織内の人的資源の把握および配置の最適化など、これまで人手と時間をかけて行われてきた業務が、ICTによって代替されるようになってきている。

人財領域における主要な課題の一つが、人財採用業務の高度化と効率化である。自社にマッチした人材をいかに見出し、また選考業務そのものをいかに効率化するのかが、多くの企業にとっての課題となっている。

この課題解決を支援するサービスとして、三菱総合研究所は、株式会社マイナビとの共同事業として「エントリーシート優先度診断サービス」の提供を開始した。新卒採用におけるエントリーシート選考業務の高度化・効率化を支援する。

企業の過去の採用実績から、採用傾向を人工知能(AI)が学習、文章の意味を判断して応募者の優先度を評価

エントリーシート優先度診断サービスでは、まず企業個々の過去の採用実績データから、人工知能(AI)が採用傾向を学習する。学習によって構築されたモデルに新たに応募されたエントリーシートを読み込ませると、それぞれの応募者の採用優先度が出力される、という仕組みである。

単に応募者の採用優先度を出力するだけでなく、その人の人物像も出力することができる。「コミュニケーション」「熱意」などの複数の人物像軸に関して、エントリーシートからにじみ出る人物像スコアを出力する(企業の採用軸に合わせて評価軸を追加することも可能)。

本サービスで重要なのは、企業の過去の採用傾向を人工知能が学習した上で、個々人の優先度を評価するということである。そして、その評価に用いる情報は所属学校や専攻などの定型的なデータのみではない。志望動機や学外活動など、文章で書かれた情報の意味を人工知能が理解し、優先度と人物像の評価を行う。人工知能はあらかじめインターネット上の文章データから日本語の意味を学習しており、それを元にしてエントリーシートの文章を理解している。

日本においては新規学卒者一括採用の慣行がある中で、新卒採用業務には多大なコストが割かれている。その大きな理由として、人材に関わるデータは数値で画一的に評価できる性質のものばかりではない、ということがあげられる。各企業の採用担当者は、応募者の属性や志望動機など、多種・大量の非定型的なデータを、素早く、一定の基準で処理することが求められる。

本サービスでは、これまで人手と時間をかけて行っていたエントリーシートの読み込み作業を、その採用方針を学習した人工知能が代替することができる。効率化が難しかった新卒採用業務を、迅速に、そして精緻に行うことができるようになる。

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図 本サービスで用いるデータおよびアウトプットのイメージ

本サービスの活用事例

本サービスの導入企業では、優先度診断の結果を次のように活用することが可能である。

・ ボーダーライン上の書類選考:選考のボーダーライン上にいる応募者を次の選考へ通過させるかどうかの判断に利用できる。
・ 採用方針と連動した人物像選考:優先度が同じ応募者の中でも、各個人の人物像を把握することで、採用方針に特に合致した応募者を見出すことができる。
・選考方針のチェック:これまでの採用実績において、応募者のどのような要素が合否に影響を与えていたのかを可視化することができ、選考方針と採用実績との間にズレがないか確認することができる。
・評価基準のブレない選考:評価者ごとの評価のブレをなくし、偏りのない基準で選考を行うことができる。
・採用ポートフォリオ形成:個々人の人物像を見ることで、個性を尊重した人財採用のポートフォリオを形成できる。

これらの活用方法からも示唆されるように、人工知能による診断がその応募者の採用可否を一義的に決定する、ということにはならない。対面での面接の参考資料の一つとして診断結果を用いる、という方法も考えられるだろう。

採用選考プロセスでの意思決定を支援するのが、人工知能の役割である。本サービスによる診断結果をどのように利用するのかは、個々の企業の採用方針に合わせて選択されるべきものである。

本サービスでは今後、更なる優先度予測精度の向上や、選考・内定辞退者の予測機能を追加するなどの機能強化が行われる予定である。

データに基づいて人財の活用戦略を立てることが、これからの人財活用においては不可欠である。人工知能のような高度な技術を用いたHR Techサービスは、人財活用に関わる企業の意思決定の支援に今後も活用されていくだろう。

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