ヘッジファンドにも広がるAI取引、淘汰はこれから……

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2016/12/16

(写真=PIXTA)


金融ビジネスにITを活用するFinTechは、さまざまな分野に広まっている。決済システムなどのオペレーションの高度化やポートフォリオなどのデータ解析に加え、人工知能(AI)を活用してコンピュータに売買の判断を任せる動きも広がっている。

ヘッジファンドでもその動きは同様で、AIの活用を前提にしたヘッジファンドが立ち上がるなど、大手資産運用会社のAIを取り入れる動きも活発化している。

常識化するヘッジファンドのAI活用

例えば、ゴールドマン・サックス出身の古庄秀樹東京大学大学院准教授が、AIを利用したヘッジファンド「プルーガ・キャピタル」を2011年に設立している。古庄氏のファンドでは、数千万にも及ぶブログを言語的に解析して、日経平均先物の売買を判断する。日本人はブログを好む傾向にあり、そのデータを解析して、投資のためのより良い意思決定をしようという狙いだ。

また2015年3月には、世界最大級のヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエーツが、IBMでAIワトソンを開発したデービッド・フェルッチ氏を迎え入れAI運用に着手。他にもJPMorgan Chaseのヘッジファンド部門Highbridge Capital Managementも、SentientとAI運用システムを共同開発し、2015年から利用している。

つまり、AIを研究したりトレードに活用したりすることは、ヘッジファンドの世界でもすでに常識となりつつあるのだ。

ヘッジファンドの9割以上がデジタルに注目

調査結果にもその実態が反映されつつある。KPMGインターナショナルが総額3,000億ドル(約32兆7,000億円)の資産運用を行うヘッジファンドのマネージャー100人を対象に実施した調査によれば、94%が「今後5年間にわたりデジタル化が生存競争に勝ちぬくカギを握っている」と確信しているという。

その中でも、自動株式売買システムについては関心が高く、74%が「今後5年にわたり、ヘッジファンド産業に何らかの利益をもたらす」とみている。 

他方で分析ツールについては、自らの存在意義にも関わるためか保守的な見方が中心である。「新たな機会を見極めるために利用している」は32%、その他「本当に価値があるかどうかわからない」(42%)、「導入の検討はいっさいしていない」(27%)と、否定的な意見が多い。

現在から将来にわたる最大の懸念はデータリスクで、83%が「サイバー攻撃への不安感が年々増している」との認識を示しており、いかに安心して使えるAIシステムを構築するかが、今後のAI活用を見通す上での、一つのカギになりそうだ。

AI運用は人の運用に勝るか?

ただ焦点は、人間による運用とAIによる運用では、どちらが優れているかだろう。オルタナティブ資産についてのデータを提供するPreqinの報告書を見てみよう。

Preqinは、2014年に公表したレポートの中で、2014年はコンピュータの判断に従った運用の成績が人間の運用を上回ったものの、より長期的に見れば人間の運用の優れた面もあると指摘。過去3年間では、人による運用が7.88%のリターンだったのに対して、システム運用は5.17%。10年間では、人の運用リターンが11.56%、システムによる運用が7.85%となり、人間の運用が比較的に良好なパフォーマンスを示したとのことだ。

しかし、将来的にこの状況も変化し続けると見る必要もある。米国ベンチャー企業のSentientは、数十万台のコンピュータを連結した大規模並列システムでAIソフトウェアを稼働させる技術を開発。Sentientは、コンピュータの連結により最大100万コアを稼働させて計算することが可能だと言う。

特にAIでは、Sentientが開発を進めるような、アルゴリズムの進化にも注目だ。Evolutionary Computation (EC)とも言われるが、AIのアルゴリズムは生物の世代間の進化のようにデータを解析させる度に、より良いアルゴリズムを選択。次の世代のアルゴリズムを生み出すことで改良していき、100万回以上もこの動きを繰り返すことで進化を遂げる。もしもAIアルゴリズムが劇的な進化を遂げれば、人間の運用に優る可能性ももちろんあるだろう。

実際、香港に拠点を置くヘッジファンドであるAidyiaでは、株式の取引を完全にAIにゆだねており、人間にとって強力なライバルになっている部分もある。今後、AIのアルゴリズムが自然淘汰のようなプロセスを経てますます優れた運用成績を収められるようになった時に、人間による長期的な運用の成績との関係がどうなるか注視する必要がありそうだ。

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